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加形 貴司(かがた たかし)
その10 「阪神優勝を夢見ながら、背番号33にアイロンを当てる。」
生まれも育ちも西宮・甲子園口。根っからのトラキチである。家族も、隣近所も、学校の友達もトラファンだった。だから、就職して初めてトラキチ以外の野球ファンがいることを知り、驚いたという。
アズワークが甲子園に年間席をキープしているので、1年に15〜20試合は甲子園へ出かけるという。だいたいが仕事仲間と一緒だ。仕事が終わって甲子園口の自宅に帰り、自転車で出かける。球場に1歩踏み込んだ途端、ヤジ将軍にヘ〜ンシン! するのだそうだ。だから必ず仲間と一緒に行く。「ひとりで球場に陣取ってヤジを飛ばすなんて、まるでバカみたいじゃないですか」という。なるほど、それはそうだ。仕事で球場に行けないときでも、気持ちはいつも甲子園にいる。
阪神の選手のなかでも、葛城生郎(かつらぎいくろう)の大ファンだ。阪神ファンでもまだなじみが薄いかもしれないが、2004年にオリックスから移籍してきた。最近活躍してきて名前も売れ出している選手だ。
葛城のどこがいいのか、とたずねると外野でのボールさばきがなんともいえず、見ていて気持ちがいいとか。それと「どうでもいいときにヒットを打つんですよ」なのだそうだ。そして、打ったときこぶしをあげて「ウォオ〜」と雄たけびをあげる。だから、ファンの間では「かつらぎ」をモジって「ウォ〜ラギ」と呼ばれているらしい。
球場へは、阪神ファンの定番である好きな選手のユニフォームに着替えてメガホンを持って出かける。もちろん背番号33番、葛城のユニフォームだ。最近でこそ、葛城の活躍があって背番号33のユニフォームも球団から販売されるようになってきたが、それまでは東急ハンズで背番号「33」のアイロンプリントを買ってきて、自分でアイロンを当ててお手製のユニフォームをつくっていた。
アズワークへ来るまでは海上自衛官だった。入社として6年目の29歳。仕事ではアタッチメントの組立を担当する中堅スタッフだが、この威勢のいいトラキチが、わが部屋でシコシコと背番号にアイロンを当てている光景はおかしみにあふれている。
ちなみに、これから伸びそうな若手選手をひとりあげるとするなら誰か、と聞いたところ、いまはまだ二軍にいるが「橋本良平」というキャッチャーが有望だとか。この橋本が矢野の後継者となったとき、阪神タイガースは、まさに破竹の勢いで毎年Aクラス、いや毎年優勝間違いなし…かどうか。アズワークきってのトラキチが保証するのだが?
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