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印刷用

こんなもんつくったでえ 1st その5

その5 「これ、ええやないか」をすぐにつくってしまった歪み取りプレス。

歪み取りプレス機

 これをつくったのは、もう20年ほど昔になる。それが、いまだ現役で立派な仕事をしてくれているのだから、少し自慢してもいいのではないか。

 200トン級の鉄板をプレスして表面をまっ平らにする機械である。その当時、当社の社長と専務がアメリカのカスケード社を視察したとき、目にしたものだった。それだけで、このプレスマシンを自社でつくってしまったのだ。資料となるのは、その時撮影したスナップ写真だけ。そこから専務が簡単なスケッチを起こし、それにもとづいて製作したのである。プレスの仕組みも鉄板の送りだしも、すべてその時の想像である。設計図という類のものは一切なかった。それこそカタチは似ているが、カスケード社のものは似て非なるものであることはまちがいない。

 他にも、「こんなのあったらいいんじゃないか」とか「市販されている工具では使い物にならない」と思ったマシンや工具は、どんどん自分たちの手でつくったものである。

フライス盤

 フライス盤、ボーリングマシンなどなど。特に、昔の職人さんは自分で使う工具は、自分でつくったものであった。それらの道具をほんとうに大切にした。

30年も40年も昔の話であるが、新人には決してさわらせてはもらえなかった。腕のいい職人は、自分でつくった、自分の使いやすい工具を、それこそ宝物のように扱っていた。

 いま、工具の開発も進み、欲しい工具、優れた工具は簡単に手に入るようになった。工具は買うもの、という意識がすっかり定着してしまっているが、それがほんとうにいいことなのかどうか。自作道具は、見てくれこそ武骨ではあったが、使い慣れたものにとっては、最高の相棒であった。