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こんなもんつくったでえ 1st その3

その3 テストで足が震えたタワーリフト。

 もうひとつ、フォークリフトの車体をベースにして開発依頼を受けたのが、タワーリフトである。システムとしては、スタッキングフォークと同じである。サイドシートの代わりに、人が中に入って仕事ができるように作業用のカゴを取り付けたものだ。

 これもエンドユーザーは日立造船さんで、船腹のペンキ塗りやサビ落としなどの作業用に使用するというものだった。

 つまり、大型タンカーなどの船体に横付けして、カゴのなかに作業員が乗り込み、船の補修作業をするためのものである。そのため、タワーの最上高が 8〜10メートルになる。車体安定のむずかしさは、スタッキングフォーク以上であったが、すでにそのノウハウがあったため、意外とスムーズに完成した。もちろん、以前に梁を切断して本体を工場の外に出したという苦い経験があったことや、10メートル近いタワーをつける必要性があることから、組立は最初から工場の外で行なった。

 さて、完成して試運転である。組立てたはいいが、さすがに高さ10メートルにもなると、怖いものである。いくら安定性に自信はあったというものの、リフトが徐々に昇りはじめると、検査員は足が震えた。カゴの周囲は安全を配慮して、当然囲いが張られているとはいうものの、最上位置を確かめ、バランスの状態を確かめるのが精一杯ではなかったろうか。そして、下から見上げつつカゴに乗らなくてよい作業員は、好き勝手なことをいうものだということを改めて悟った。